子どもの貧困をなくすための具体策を提言 対策推進法12周年で集会

子どもの貧困解消に取り組む5団体が6月16日、参議院議員会館で子どもの貧困対策推進法の成立12周年を祝う院内集会を開きました。5団体は、あすのば、キッズドア、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、ラーニング・フォー・オール。困窮子育て世帯への支援や、こどものいのちと生活、学びを守る支援の具体策を提言にまとめ、当事者の声とともに発表しました。

手作りのバースデーケーキに入刀

集会の冒頭で、超党派でつくる「子どもの貧困対策推進議員連盟」の国会議員や法務省、厚生労働省、こども家庭庁の代表が、子どもたちが手作りしたバースデーケーキに入刀。

議連会長の田村憲久衆院議員は「ひとり親世帯へのきめ細かな対応が必要だ。企業と連携した就労支援、住まいの確保、児童扶養手当の増額、養育費の確保、教育格差の解消などに取り組んでいきたい」と決意を語りました。

鈴木馨祐法務大臣は「養育費の確保は子どもの健やかな成長のために重要。改正民法の来年施行に向けて、養育費の確保策について周知を進めている。みなさんの思いを受け止めて一歩一歩進めていく」と話しました。

野中厚・文部科学副大臣は「子どもには平等にチャンスが与えられるべきだ。幼児期から大学までの教育費の負担軽減に取り組んでいるが、貧困解消には道半ば。教育の質の向上、機会の平等の両輪でがんばっていく」と述べました。

厚生労働省の吉田真次政務官は「生まれた環境で子どもの将来が左右されることがあってはならない。貧困の連鎖を断ち切って生活の安定につなげるため、自立に向けた支援を行っている。子どもの貧困解消に向け、みなさんと連携しながら、施策の推進に取り組む」とあいさつ。

こども家庭庁の吉住啓作支援局長は、三原じゅん子内閣特命担当大臣(こども政策)の式辞を代読しました。

「こどもの貧困解消法を踏まえ、一歩一歩対策を前に進めています。ひとり親家庭への多面的で伴走的な支援を強化するとともに、先般策定した『こどもまんなか実行計画』でも、困難に直面するこども・若者への支援を重要な柱としております」

働いて収入が増えると手当がなくなる

当事者代表として、しんぐるまざあず・ふぉーらむの会員のKさんが話しました。

4年前に夫と死別し、子どもと2人暮らし。

「職人である夫は国民年金だったため、遺族年金では生活できず、死別当初は児童扶養手当を受給していました。家計を支えるために看護師として正社員で働くことにしました。子どもにとっては父を亡くし、母は遅くまで帰ってこない生活になりました。がんばって働いて年収が400万円台になり、児童扶養手当、ひとり親医療費助成、都営交通の無料パスなどの対象から外れました。経済的不安があるから正社員で働いたのに、手当が受給できなくなり、さらに不安が大きくなってしまいました。納得できずもやもやした思いでいっぱいでした」

「子どもは不登校になりました。一緒にいる時間を増やそうとパートになり、貯金を取り崩して生活しています。しんぐるまざあず・ふぉーらむの就労支援に参加したことで、自分の気持ちを整理し、物事を前向きに考えられるようになりました。子どもの気持ちも少しずつ安定し、自分で選んだ高校に進学することもできました」

「児童扶養手当の受給はまだ復活していません。家計の状況が変わっても、すぐには支援がないまま。本当に辛いです。働いて収入が増えると支援がなくなり不安が増すのなら、働く意欲がなくなってしまうのは当然だと思います。児童扶養手当の増額と、所得制限の引き上げが必要であることをご理解いただき、みなさんにも自分ごととして考えていただきたいと思います」

子どもでいられる期間短い スピード感ある支援を

あすのばの子ども・若者委員の高校2年生は両親の離婚で「貧困」と出会った、と話しました。

「習い事をやめました。ガスが止まり祖母の家にお風呂を借りに行ったこともあります。受験期は特待生制度のある高校を選ぶこととなり、自分にはどうにもできないことがあるのだと痛感しました」

あすのばのキャンプに参加し、子ども・若者委員となり、子どもたちが「夢を持てない」現実に直面したそうです。

「これからの日本に必要なのは働く母子家庭への支援と子ども達の居場所のさらなる充実です。働くことが困難だったり、子どもの人数に対し支援が不足していたりする家庭はまだまだたくさんある。子どもの貧困という状態がずるずると12年も続いている。もう終わらせたい。子どもが子どもでいられる期間はとても短いです。スピード感がある支援が必要です。それは私たち子どもにはとても難しい。でも大人にはできるはずです。一日でも早くすべての子どもたちが夢を持ち安心して暮らせる日がくることを希望します」

個人・団体のつながりで関心を持続

各団体の報告に続き、北海道大学教育学研究院の松本伊智朗名誉教授による講演「こどもの貧困の解消に向けて これまでとこれから」がありました。

松本氏は「こども基本法の策定により、権利の問題としての位置づけや子ども期と若者期の連続性について前進がみられた。一方、子どもの貧困大綱がこども大綱の中に埋没してしまう恐れもある」とし、「子どもの貧困にかかわる活動や運動、関心を寄せる個人・団体のつながりの形成が、子どもの貧困への社会的関心が持続するカギとなる」と話しました。

5団体の提言はこちらからダウンロードできます。

集会の様子が報道されました。

◇朝日新聞

https://digital.asahi.com/articles/AST6J36Q6T6JUTFL00SM.html?ptoken=01JXWBNZVTXG2S14XMM0Z5E6A9&fbclid=IwY2xjawK-4r1leHRuA2FlbQIxMABicmlkETF6TW5paDZuM2tmZU1OS1BTAR6EVAoYJJliTniYAYkBGyCyIQLksmn4bX9PBCnHnEivnr4-c9g5KYgsiye0eg_aem_5Vy0fXuU8eYlp4hFJih5uA

◇日本テレビ

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/ntv_news24/nation/ntv_news24-2025061602469593?redirect=1