認知で共同親権になれる制度を「望まない」6割〜未婚(非婚)のひとり親調査
法制審議会家族法制部会で、離婚後の親権の在り方について議論が進んでいます。
現在、法務省から出されている民法改正案のたたき台では、「これまで母のみを親権者としていた未婚(非婚)のひとり親にも、父の認知があれば、父母の協議で父母の双方もしくは父を親権者と定めることができる」とする案が出ています。
未婚(非婚)のシングルマザーは、この案をどう受け止めるのでしょうか?
しんぐるまざあず・ふぉーらむが11月22日〜24日に、WEBアンケートを実施しました。未婚(非婚)で子どもを育てている87人が回答しました。
未婚(非婚)で出産した子どもの数は1人が72人、2人が13人。1番目の子の年齢は5〜9歳が最多で34.9%、10〜14歳23.3%、0〜4歳22.1%、15〜19歳14.0%、20歳以上5.8%。手当や養育費、年金を含まない年間の就労収入は100万〜150万円未満が26.4%と最も多く、経済的に厳しい状況であることがわかります。
未婚(非婚)のひとり親になった経緯は「(子の)父親と別れた」36人、「不実・虚偽があった」29人、「DVを受けた」18人、「父親に法律婚の配偶者がいた」15人、「父親と連絡が取れない」14人と多様でした。「精子提供を受けて妊娠した」も1人いました。「未婚だが共同で子育てをしている」人はいませんでした。
認知には、父親から届け出る「任意認知」と、調停や訴訟で認知が認められる「強制認知」があります。「任意認知」のうち、母親が妊娠中の「胎児認知」には母親の同意が必要ですが、子どもが出生してから成人までの間は、父からの「認知届」に母の同意は不要です。
アンケートでは認知を「受けている」が54.9%、「受けていない」が45.1%とほぼ拮抗。認知の手続きでは、「強制認知」が21.3%、出産後の「任意認知」が55.3%、「胎児認知」が23.4%でした。
養育費が「支払われている」は19.5%、「途中まで支払われていたが途絶えた」16.1%、「払われていない」が62.1%。面会交流を「している」は12.6%、「途中までしていた」12.6%、「面会交流していない」72.4%。
父親と子どもの関係は「連絡先は知っている」41.4%、「連絡先を知らない」37.4%で、「ひんぱんに会っている」は5.7%にとどまりました。
認知後に父親が共同親権者になれる制度については、「望まない」が60.0%、「父母の合意があるときのみ望む」22.4%、「父母の合意があるときあるいは裁判所の決定で望む」17.6%でした。認知の有無では、回答に有意差はありませんでした。
DVを受けたことがある層で「望まない」が72.2%と高く、一方、「面会交流をしている」層で「合意で望む」「合意か家裁の決定でのぞむ」の合計が72.8%と高く出ました。
認知した父親に法定養育費が自動的に決まる制度を「望む」は34.5%、「望まない」20.7%、「わからない」44.8%。
自由記述では、認知後の共同親権についてさまざまな意見がありました。
■双方の合意がある場合のみ賛成の人は
・形ばかりの共同親権のみを推し進めることには反対だが、共同養育を義務づけることは賛成。ただし虐待加害に対する厳罰化と更生、子ども自身の意思を尊重するものでなくてはならない。
・合意なく強制的に共同親権となってもいいことは何もないので、きちんとした話し合いをしてその上で双方の合意であればいいと思う。
■双方の合意あるいは家裁の決定で共同親権に賛成の人は
・立場が違えば望む人もいると思うから。その場合、男性側が合意しないことが考えられるので、家庭裁判所の存在は大きいと思う。
■共同親権を望まない人は
・DVを受けていて住民票のブロックもしているのに、一緒に育てていきたいとは思いません。
・妊娠を告げて堕胎を勧めてくるような人と共同親権者にはなりたくない。
・相手が父親としての役割を果たさないなら親権は足かせになる場合があると思う。
・母子の命を守るため、子どもの存在を悟られないように逃げている。
また、現行法では、母親の同意なく父親が勝手に認知届を出せる状況にあることを疑問視し、「まず認知届が母親の合意の下で出せるようになることが先だ」という意見もありました。
認知の父に法定養育費が自動的に決まる制度についての自由記述では次のような意見がありました
■賛成
・責任を果たして欲しい。少しでも自分が親だと自覚して欲しい。
・認知から養育費の決定まで相当な時間と手間がかかったので自動的に決まったらありがたい。
■反対
・認知自体が難しい。認知しなければ養育費が出ないとなると、現状と変わらない。
・ますます認知してもらえなくなる
■わからない
・費用が決まっても強制的に払う義務がなければ払わない人が多数だと思う。
・妊娠した際に子どもを望まなかった父親との関係を継続的に行う必要があるか分からない。
・子どもへの責任として養育費は必要だと思うが、関わりを持つことで命や精神が危ぶまれる。
法制審議会では離婚後の共同親権・監護に関する議論などが主たる議論とされています。その中で、認知制度に関してはさらに議論を要するという発言などがありました。
調査結果を受け、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は、「未婚・非婚の出産によるひとり親の意見は一様ではありませんが、認知後の共同親権を望まない人もいます。認知をしたら法定養育費が決まるとなれば、父親が認知を避ける傾向が出てくる可能性もあります。また、DVやストーカーの被害があるケースでは、一方的な認知と共同親権を認めた場合、居所が突き止められてしまうなど被害の拡大のおそれがある。非婚・未婚のひとり親の意見やニーズを調査しないまま、離婚後の共同親権に付随的に決めていくことには、問題があると感じています」と話しました。