3月27日、子ども・若者の貧困解消を!5団体が共同提言

3月27日、子ども・若者の貧困解消に取り組む5団体と子どもの貧困対策推進議員連盟が共催で、衆議院議員会館で院内集会「子ども・若者の貧困解消に向けた恒久的な施策の拡充を!」を開きました。

5団体
公益財団法人あすのば
認定NPO法人キッズドア
認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
認定NPO法人D×P

異次元の少子化対策というけれど

最初に日本大学教授の末冨芳さんが開催趣旨を話しました。

「異次元の少子化対策、子ども子育て予算の倍増が国会で議論されていますが、子どもの貧困対策については政府の対策が遅れがちです。日本の子どもの7人に1人が貧困状態。
長引くコロナ禍や物価高騰の影響で、低所得の子育て世帯でより生活が厳しくなっています。すべての子どもたちが安心して学び、成長していけるというのが、『こどもまんなか』の子ども政策です」

集会には、今年4月にこども家庭庁が発足するにあたり、貧困状態にある子どもたちにも、子どもの権利に根ざした子ども施策が図られるよう、具体的な要望を伝えるねらいもあります。

あすのばの小河光治代表理事が、共同提案を読み上げました。

  1. 速やかに低所得子育て世帯に生活支援特別給付金の再給付を。
  2. 児童手当の18歳までの支給延長 低所得世帯には上乗せ給付を
  3. 児童扶養手当の増額と所得制限の緩和を。
  4. 高等教育の無償化の所得制限緩和と進学しない若者への支援強化を

このうち、特別給付金の再給付(5万円)については、予備費で対応するという方針が政府から示され、団体からは評価とともに早期支給を求める声がありました。

また、物価高の影響が続く中、随時の支給ではなく、継続的な支援をお願いしたいという声がありました。

また、児童手当の18歳までの支給延長、所得制限の撤廃なども政府が調整に入ったと報道があり、小河さんは「大変心強い。小・中と就学支援があっても、高校になると支援がなくなってしまう。手当ができる限りすべての子どもたちに届くようにしてほしい」と話しました。

5団体のリレートークで、あすのばの小河さんは『入学新生活応援給付金事業』について、「申込者が3年連続過去最多を更新し、国から1万8千人を超す申し込みがあった。6倍にもなっている。年収と貯蓄を聞いたところ、平均年収が140万円、半数は貯金がないという。児童手当、児童扶養手当など現金給付をいかにしていただくかが大切だ」と話しました。

集会に先立ち、3月16日には、国会議員を対象に、『困難を経験した子ども・若者の意見に耳を傾けるつどい』を開きました。

「午後8時まで多くの議員に耳を傾けていただいた。お金の支援だけではない。全国どこにいても頼れる場所を作ってほしいという切実な声があった」。

キッズドアの田中博子さんは物価上昇が高校生の進路にどう影響したかについて話しました。

「塾や予備校に行けない、参考書が買えない。経済的な理由で志望校をあきらめた、という答えも多かった。進学志望だったが、就職し家に給料をいれるね、と言った高校生もいる。子どもがやりたい学びについてますます話さなくなった、入学金が準備できずに進学をあきらめざるを得なかった、という声もありました」

「大学から専門学校に進路を変えた。受験が一校しかできないので、志望校ではない、安全圏の学校を受けざるを得なかった。お金がかかる理系から文系に変えたと言う子どももいる」

その上で、高等教育の無償化や給付型奨学金の大幅拡充を強く求めました。

●児童扶養手当の所得制限を緩和して

しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は、ひとり親家庭の命綱である『児童扶養手当』の増額と所得制限の緩和を求めました。

具体的には、多子加算額を2万円に上げるなどの全般的な増額と、児童扶養手当の所得制限を全部支給で年収160万円から200万円に、一部支給で365万円から400万円に引き上げるという要望です。

「3300世帯分の食料支援を予定していたが、応募が4300を超えてしまった。毎月お米を買うことができないという経験をしている人がこれほどいるということを考えていただきたい」

「コロナ禍と物価高騰で格差が広がりました。年間就労収入が150万円。お弁当がなくて学校に行けないとか、水道光熱費の節約のためトイレを流すのをがまんしていると言う状況で、子どもたちが成長できるでしょうか」と訴えました。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの川上園子さんは、こどもの権利実現を目指す国際NGOの立場から「日本国内は特に子どもの貧困問題の解決が重大な課題です」と指摘。

給付金、食料支援、育児用品の提供など、年2万5000人に支援を届ける中で、日々の厳しい生活状況を訴える声、国の支援制度の充実を求める声を聞いてきたとし、物価高の影響について、「昨年の夏と比較して、この冬、十分な量の食料を買うお金がないという回答が10ポイント以上上昇した。物価高の影響は進行形だ」と話しました。

また、卒入学の費用のための借り入れをした世帯は4割を超えたとし、「高校生世代への支援を特にお願いしたい。高校生を含めた教育の完全無償化を行ってほしい」と述べました。

子ども1万人が登録しているチャットから、「10代の孤立」解消に取り組むD×Pの今井紀明理事長は「電気やガスが滞納で止まっていたり、大学の学費と実家への仕送りのためにバイトとパパ活をしていたり。15~25歳の置かれている状況は本当に厳しい」。

D×Pは寄付を原資にして、生活困難な若者に、当座の現金8万円の給付や中長期的な食料支援を行う『ユキサキ支援パック』を始めました。

「支援希望者の58%が借金や滞納を抱えている。ひとり親、社会的養護の対象世帯が5割。社会人(無業者)からの相談も多い。親に頼れないが9割にのぼる」とのデータを示しました。

そして若者の声を紹介しました。

「生きていくのがやっとで、趣味や楽しみにお金をかけられません。政治をしている人たちは自分たちに生きていてほしくないのだろうと思っている」。

「民間のNPOからの支援は限界です。広告を出せば出すほど相談が来ます。支援の拡充をお願いしたい」と訴えました。

●自身の体験から共感を寄せる国会議員も

国会議員の発言は以下の通りです。

下村博文衆院議員(自民・東京)

私はあしなが育英会の第1期生。父は私が9歳の時に交通事故で亡くなった。高校生の時にあしなが育英会ができ、日本育英会の奨学金と合わせ、高校・大学に進学することができた。大学生の時、あしなが育英会で街頭募金をやった。遺児の進学はカンパ、ボランティアによって成り立っている。「交通遺児に進学の夢を」と当時は言っていた。今は震災遺児、病気遺児、自死遺児とつらい思いをした子が街頭に立っている。本人に責任がないのに、こういうことをさせたくない。せっかく日本に生まれて、チャンスや可能性があるはずなのに、経済的な理由で途絶えるというのは、国の活力を削いでしまう。5団体の訴えを超党派で受け止めて、しっかり対応したい。

芳賀道也参院議員(国民・山形)

教員をやっている親友から、地元の山形市で食事も満足にとれない子がいるんだと聞いて、当時は驚きだった。県民の平均収入も低いものですから、貧困の割合も高い。
子ども食堂でみんなが繫がれる、と教わって、なるほど、と思った。
現場の声をよく聞いて、小さな政党ですが、がんばってまいりたい。

田村憲久衆院議員(自民・三重=子どもの貧困対策議員連盟会長)

いま子どもの状況が非常に厳しい。政府から対応の方策が示されているが、まだまだ厳しい。ひとり親だけではなく、ふたりおられても厳しい状況で生活されておられるお子さんがいる。働き方自体にも色々な課題がある。一度、正規のルートから外れると低賃金の非正規となり、非常に厳しい。そういう部分も我々はしっかりと見直していかなければならない。緊急に支援をしていかなければならない部分もある。立法の立場からも院内集会はありがたい。

牧原秀樹衆院議員(自民・埼玉)

社会福祉協議会に聞くと、都内は外国の子どもが大変に多い。日本の中で別の貧困層を生みかねない。そういう悩みも聞いている。これも課題として取り組みたい。
受験が1回しか受けられない、入学金が払えないというのは一生の問題になってしまう。教育機会の均等については、力を入れてやっていく。給付金がなくてもやっていける制度を恒久的につくっていく。

山井和則衆院議員(立憲・京都)

異次元の少子化対策、子ども予算倍増と言いながら、貧困家庭のお子さんへの支援が非常に弱いと思う。さまざまな子育て支援の充実策ができればできるほど、一方で貧困家庭への支援が抜け落ちていたら、(格差拡大という)恐ろしいメッセージになる。貧困家庭の子は日本の政府が見捨てるということになりかねない。与党と力を合わせて、なんとか、政策で光があたるように、超党派で取り組んで行きたい。

梅村みずほ参院議員(維新・大阪)

防衛費と同様に、子どもの予算を付けられるはず。教育の確保で貧困の連鎖を絶ちきるということが重要。いま大阪で貧困世帯にお米の給付支援をしている。大阪では公立大学で無償化を進めている。高等教育も税金でなんとか(工面)していくのだという姿勢を崩さずにやっていきたい。

竹谷とし子参院議員(公明・東京)

先日は困難な状況の子どもたちとの意見交換会で率直な意見をいただいた。
お母さん方からお声を聞いてきたが、子ども当事者、特に親がいない子どもたちの声もしっかりきかなければいけないと痛感した。
こども家庭庁発足で、受け皿が強固になる。貧しいだけでなく、さまざまな面で困っている子にしっかり対処していけるように。現金給付を一時的でなく、恒久的な制度に発展させていく。

宮本徹衆院議員(共産・東京)

就学援助を受けていなくても子どもが4人いたら、給食費を払うのも大変だ。
中学校の学校給食がないと、お昼を抜いている状態の子どもがいる。
最も金銭的に厳しい人たちをしっかり支えられる予算を。
教育無償化を卒論のテーマにして進んできたが、ぜひ与党の方でも取り組んでいただきたい。教育を受けるのは権利。所得制限はいち早く取り払わなければ。
高校入学の給付型奨学金は非課税世帯までとするならば、就学援助で中学を出た子のすべては救われない。

寺田静参院議員(無所属・秋田)

自分の県の子どもの貧困を知ることができた。私自身、中学校で不登校、高校中退を経験した。不登校で、ひとり親家庭だと困難が輻輳化する。こうした子どもへの手厚い支援が必要だ。

●子どもの貧困対策法10年に向けて

今年6月に、『子どもの貧困対策法』が10年を迎えます。集会の締めくくりに、あすのばの小河さんは「この法律は、みなさん、生みの親で育ての親。小さく生んで大きく育てようと、5年前に法改正した。来年には2度目の見直しということになると思います。コロナの間にもともと大変だった子ども、学生が、物価高でさらに大変になっている。一時的な支援だけではなく、恒久的なものにするためには、雇用の問題にもしっかりと取り組んでいかなければならない。骨太の方針に向けて予算を積み上げ、子どもの権利大綱に向けて、子どもを支える、若者を支える団体とともに歩みを進めていきたい」と話しました。

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▼テレ朝NEWS で紹介されました。

子どもの貧困解消へ“超党派”で提言 ひとり親世帯の児童扶養手当増額など
[2023/03/27 18:33]