「男の子の育て方」セミナー 臨床心理士の岡田太陽さんに聞く 54人が参加
シングルマザーの悩みの一つが、異性である男の子の育て方。しんぐるまざあず・ふぉーらむの相談でも、息子との接し方に戸惑う声が寄せられています。そんな悩みに答えようと、9月23日、会員を対象にオンラインで「男の子の育て方セミナー」が開かれました。54人が参加しました。
子どもの教育相談、スクールカウンセラーなどに携わる臨床心理士でカウンセリングルーム「Circle of life」代表の岡田太陽さん。「シングルママのための男の子の育て方-男の子の発達と思春期について-」というタイトルのスライドを示しながら、話を始めました。
日本では保育園や幼稚園の先生の9割が女性、学校の先生も7割が女性、主たる養育者はお母さん、つまり女性。男性が子どもに関わる機会がもともと少ない中では、シングルファーザーが女児を育てるよりも、シングルマザーが男児を育てる方が、困難が多いのではないかといいます。

「子育てでは主たる養育者が笑顔でいることが重要です」
「子どもにとっては愛着形成が重要。愛着とは世界における安全基地です。ここが安定していると子どもは安心して世界を探索できます」
シングルマザーは、父性的役割、母性的役割、社会人的役割など様々な役割を行ったり来たりしなければなりません。
「役割が変わるのはトラウマ級のストレスだとも言われています。1人で抱え込み過ぎず、子育てはネットワークで支えてもらうといいですよ」
男児の特性については次のような傾向があると話しました。
・平均的に女児より発達が緩やか。
・神経発達症(発達障害)の発現頻度も女児より高い。
・言葉の発達が遅い。思いを言葉にできずにかんしゃくを起こす。
・衝動性のコントロールが低い。とっさの暴力が出やすい。
・視覚的空間的認知が得意。体験的に理解する。
こうした特性を持った子への関わり方として、
・指示は短く簡潔に。
・図を書くなど視覚的に伝える。
・言語発達を促す「なぜ?」「どうして?」の問いかけが大事。
・考えてから行動するより失敗から学ぶことが大きい。やらかすことが前提。
・叱り過ぎない。三つ褒めて一つ叱るぐらいで。
などを挙げました。
最近は家でも座って用を足す男児が多いですが、学校や公共施設では男性は小便器が使えないと不便です。
「立ち小便は練習しておきましょう」

性教育については「基本的には人権の話。バウンダリー(境界)と自他の双方を尊重することに尽きます」と話しました。
子どもの性器いじりは不安への対処行動。やめさせるよりも、何が不安かを読み解くことが大切だと話しました。
性的な問題行動も「子どもからのSOS」と捉え、タブー扱いしないこと。相談できる同性がいる環境をつくること。
思春期は「自分が何をしたいのかを探る時期」。最近は26歳ごろまで長引いているそうです。
その中でも反抗期は親の更年期ともぶつかり、悩みが深まる時期。「うるせえ、ババア」に傷つく人もいると思いますが、岡田さんは「親に甘えられる関係ができているということでもある。自分の安全基地が盤石であるということを最後に確認しているととらえて」とアドバイス。
この時期の子どもに、頭ごなしに否定したり、過度に干渉したり、感情的に叱ったりすることはNG行為。
ぐっと飲み込んで、お弁当をつくるなど衣食住の提供を切らさないようにするだけでも充分。それも余計なお世話的な対応をされることがありますが、「親のありがたさはひとり暮らしをしてみないとわからない。感謝は遅れてくるものだと思ってください」(岡田さん)。
子どもの話に耳を傾ける、親の不安を押しつけない、解決法を先回りしない、などが対応のコツだといいます。

同性と仲の良い子どもや性的な関心がない子どもも見受けられますが、この時期は「早急にLGBTQなどと判断せずに見守る」ことも大事。子ども自身も自分が何者なのか、モヤモヤしています。そのモヤモヤに寄り添うことが大事なのだそうです。
会員の関心は非常に高く、質疑応答も途切れることなく続きました。事後のアンケートでは幼い子どもと、思春期の子どもに分けた講座を希望する声も多かったです。引き続き、このテーマでの講座も企画していきたいと思います。
【参加された方の声】
〇思春期の子どもの体と心の変化を分かりやすく伝えていただき勉強になりました。(子ども15歳)
〇私の親からは、子ども(男児)のしつけが出来ていないと言われることが多く、自由奔放な子どもの行動や癇癪が多いことに悩んでいました。しかし、あまり言い過ぎも自尊心にも関わりますし、難しいところですが、今日教えていただいた線引きを意識しながら対応を考えていこうと思います。(子ども6歳)
〇まさに、悩んでいた内容ばかりだった。息子が性器を触ったり、親の胸を触ることもあるから、これからどのように接して教えていくべきか、参考になった。(子ども7歳)
