入学にかかった費用の平均額が増加 新入学お祝い金2024アンケート
ひとり親家庭の子どもたちを安心して学校に送り出せるようにと、しんぐるまざあず・ふぉーらむでは2016年から「新入学お祝い金」事業を行っています。
2024年4月入学のお子さんで、新入学お祝い金を受け取られた方を対象にしたアンケートの結果がまとまりました。預貯金が少ない中、入学にかかる費用は年々高騰を続け、工面が苦しくなっている様子がうかがえます。
入学にかかった費用の平均は大学が120万円、専門学校が83万円、高校(高専)が43万円、小・中学校が17万円でした。物価高などを反映し、2019年の平均額と比べ、大学は28.6%増、高校は38.5%増。小学校も文具や学習机の値上がりなどから9万円から17万円へとほぼ倍増しています。

一方、預貯金の状況を聞くと、「貯金ゼロ」が30.2%、「1〜50万円以下」が43.6%を占めました。4人に3人がほとんど貯金がない中で、入学費用の捻出をしなければなりません。

実際にどのように入学費用を準備したかを聞きました(複数回答)。
「食費などの節約」63.8%、「預貯金を取り崩す」63.2%、「仕事を増やした」34.5%、「親族の援助」24.7%と続きます。一方、借り入れは「民間の奨学金や給付金」18.1%、「自治体や社協の貸付金」5.9%、「国の教育ローン」2.8%と利用が低調でした。特に自治体や社協の貸付金について申請しなかった理由として「制度を知らなかった」が23%を占め、周知が遅れていることがうかがえます。
しんぐるまざあず・ふぉーらむの新入学お祝い金以外の給付金を受け取っていないという回答も4割にのぼりました。

保護者が望む支援策(複数回答)では「制服の費用負担減」「教材費の費用負担減」がともに7割弱。「無料塾や習い事の費用負担を減らす」「給付型奨学金や授業料減免などの所得制限を上げる」「子どものスマホ料金など通信費への支援」「子どもの通学にかかる交通費への補助」なども4〜5割いました。

入学費用を捻出するため、経済的理由であきらめたことを保護者と子ども、それぞれに聞きました。
保護者は「(子どもの)友達との外出」51.6%、「塾・習い事」48.2%、「誕生日・クリスマスなどの祝い事」46.1%の順。
子どもは「友達と出かける」54.7%、「塾・習い事」43.6%、「お小遣いやお年玉をもらうこと」43.3%の順でした。少ないながら「部活動」9.7%、「修学旅行など学校の行事」4.8%という回答もありました。

子どもの自由記述には次のような意見がありました。
・友達との外出をあきらめました。お母さんに「お金大丈夫?お年玉出すから、行ってもいいよ」と言ってほしいと思いました。(中学校入学)
・みんなが楽しそうに修学旅行のまとめをしているとき辛くて保健室に逃げた。卒業アルバムを見るのがつらい。(高校入学)
・野球部に入りたかったが、ユニホームや遠征費などが多くかかるため悩みました。また、野球部に入部したらアルバイトが出来なくなるので、断念しました。塾もかなり月謝がかかるので塾なしで大学進学をするために1年次から指定校推薦を目指し、毎回の定期テストを頑張りました(大学入学)
また、大学・専門学校生の88%が奨学金を受給しており、受けている人の6割が「成績や出席状況による打ち切りのプレッシャー」を感じていました。

昨年11月の新入学お祝い金2024報告会でコメントをくださった公立中学校事務職員で「隠れ教育費」研究室の栁澤靖明さんは、物価高に伴う値上げの例を示してくださいました。2022年から24年にかけて、保護者負担の校外学習費のバス代が4863円から8000円に、中学校給食の食単価が282円から357円に、ブレザーの下に着るワイシャツが2720円から3400円に、値上がりしました。学校で購入する消耗品も例えばコピー用紙の値上がりで1年に約16万円の負担増となっています。
費用負担軽減に保護者ができることとして、「保護者会や懇談会で意見を言う」「保護者アンケートを活用する」などの手段で、制服や指定品の見直しを求めてはどうか、という意見が出されました。
アンケートの結果を受け、しんぐるまざあず・ふぉーらむでは次のような提言をまとめ、文科省、こども家庭庁や国会議員に働きかけています。
●しんぐるまざあず・ふぉーらむからの提言
- 就学援助の入学準備金をすべての自治体で行ってください。
- 高等学校奨学給付金を入学後できるだけ早期に支給してください
- 制服や学校指定品など、入学にかかる費用を抑えられるように学校は保護者の意見を聞いてください。
- 公的貸付制度の周知をお願いします。
- 養育費の確保に、行政は前向きに取り組んでください。
- 公立学校の行事の費用を抑える策を講じてください。
- ひとり親家庭の子どもたちの声に耳を傾けてください