ひとり親にとっての年収の壁、なくして 児童扶養手当の拡充など要望
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむなど、子どもの貧困対策に取り組む4団体(ほか、公益財団法人あすのば、認定NPO法人キッズドア、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)が、ひとり親にとっての「年収の壁」である児童扶養手当の所得制限の額を引き上げるよう求める「共同要望書」を取りまとめました。
12月6日に厚生労働記者クラブで記者会見し、発表しました。
要望したのは次の3点です。
1. 児童扶養手当「所得制限の壁」大幅な引き上げ
ひとり親世帯への児童扶養手当の所得制限(一部支給・世帯人数2人)を私立高校無償化ラインの年収590万円まで引き上げてください。また全部支給の所得制限を年収385万円まで引き上げてください。
2. 児童扶養手当の増額
児童扶養手当の全部支給の月額を、少なくとも1万円増額し、4万5500円から5万5500円にしてください。子ども2人目以降の加算額も1万円増額し、1万0750円から2万0750円にしてください。
3. 困窮ふたり親世帯に児童手当の上乗せ支給
困窮するふたり親世帯等への新たな給付金制度として、年収590万円までの世帯の子どもへの児童手当を、少なくとも月額1万円上乗せして支給してください。
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あすのばの小河光治代表理事は過去30年間の児童扶養手当の所得制限と支給月額、最低賃金の伸び率をグラフにして示しました。
児童扶養手当の一部支給の年収制限は1994年の408万円から99年に300万円に下がり、その後上がりましたが、現在385万円です。
全部支給の年収制限は1994年の205万円から2002年に130万円に下がり、現在は190万円です。
「今年11月支給分から年収制限が上がりましたが、それでも30年前の水準に届かない」と小河さん。
また、全部支給の基準額も、1994年を基準とすると15.5%しか上がっていません。最低賃金が77.3%上がっているのと対照的です。
要望書ではこの状況が「ひとり親の働き控えや経済的自立を阻害している」と指摘しました。
しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事長は11月から12月にかけて実施した「2024冬ひとり親家庭就労生活調査」の結果を示し、訴えました。
「親は1日1食が2割、2食が5割、子どもは給食がある期間にもかかわらず、2食以下が3割です。非課税ライン以上の『課税困窮層』も食事回数を減らさざるを得ない。親は子どもの残りものを食べています。
自由記述では水道代を節約するためにスーパーに水を汲みに行くと言う人が何人もいました。トイレは何回も使った後でないと流せないという声をこの4年間ずっと聞いています。課税困窮層の3割が水光熱費や家賃、学費の滞納をしています。課税されている困窮世帯を救わないと子どもたちの未来はありません。
クリスマスの費用を捻出できないは62%、お正月の費用を捻出できないは73%。こういう状況をこのまま許しておいてはいけないと思います。
がんばったら報われるように所得制限の壁を上げていただきたい」
4団体は12月19日には、超党派の国会議員でつくる子どもの貧困対策推進議員連盟の総会に出席し、要望を伝えました。
子どもがいる世帯の相対的貧困率(所得中央値の2分の1以下の割合)は6人に1人から、9人に1人へと見かけ上は改善したように見えます。国会議員からも「食料支援の配布に子ども連れが目立ち、列が伸びているなど、実感と違う」という声が上がりました。
キッズドアの渡辺由美子理事長は「高齢者が増え、子どもがいる世帯が減り、所得中央値が下ぶれしていることを考えないといけない」と指摘しました。
記者会見の様子が報道されています。
【日本テレビ】
https://news.ntv.co.jp/category/society/a68aa84bfff14cf4881ee2d416a13405
【TBSテレビ】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1616613
【テレビ朝日】
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000391473.html