ひとり親家庭をサポートする全国ネットワーク

11月24日、院内集会「コロナ禍のひとり親世帯の子どもたちの現状と支援の拡大を」開催報告

11月24日、院内集会「コロナ禍のひとり親世帯の子どもたちの現状と支援の拡大を」を開催しました。

新型コロナウィルスの感染拡大で、ひとり親世帯は大きな影響を受けました。

仕事がなくなったり、収入の減少から食料を買うのも厳しく、食事回数を減らした方も少なくありません。

この間、シングルマザーサポート団体はのべ 3 万人を超えるひとり親と子どもたちへ食料支援を行い、困難を抱える世帯の伴走を続けてきました。

このままでは、年が越せないという声も聞こえてくることから、院内集会で、ひとり親世帯の実態や要望について訴えました。

たくさんの議員の方々にご参加いただき、私たちの訴えに耳を傾けてくださり、貴重なご意見や心強いご発言をいただきました。

これからもひとり親家庭が健康で安全・安心に暮らせるための支援を続けていきたいと思います。



【取り上げたテーマ】

0.新型コロナの母子世帯への影響  
 〜しんぐるまざあず・ふぉーらむ (関東)赤石千衣子

1.ひとり親世帯臨時特別給付金の再度支給を  
 〜えがおプロジェクト (富山県)出分玲子

2.児童扶養手当の窓口の改善を  
 〜しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西(関西)山口絹子

3.就労支援施策の拡充を  
 〜しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡(福岡)大戸はるみ

4.コロナ禍での子どもの教育支援を  
 ~ひとり親パートナーズ (香川)田中佐緒

5.別居中のひとり親家庭への支援を  
  〜フローレンス 駒崎弘樹

6.養育費の不払い解消と共同親権制度導入はストップを!  
 〜シングルペアレント101(静岡県)田中志保

7. 安心安全な面会交流を  
 〜こどもステーション(広島県)奥野しのぶ

8.生活保護制度の要件緩和を  
 ~ドットスタイル(山口県) 小西凡子

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1.コロナ禍のひとり親家庭の現状とひとり親世帯臨時特別給付金の再度支給を  
 〜えがおプロジェクト (富山県)出分玲子

今、コロナの影響は「仕事を失った」、「収入が減少した」、「生活費が多くかかって生活が苦しい」という段階から次のもっと深刻な段階へ移っています。それは、精神的な苦しさという点です。

富山も例外ではありません。私がかかわっているシングルマザーの中にも過呼吸で精神科を受診している人がいて、精神科に同行支援することもあります。

お母さんの不安定さは、子どもたちにも影響します。精神的な不安定さから子どもに怒りをぶつけている例もあります。お母さんが過呼吸で苦しそうだから、刺激しないようにしているという子どももいます。

私は小学校の教員をしていましたが、お母さんの不安定さが子どもたちの不登校や問題行動につながっている事例をたくさん見てきました。お母さんのしんどさは、子どもたちの心に暗い影を落としているのです。ひとり親家庭であれば、なおさらです。

第二次補正予算では、所得の低いひとり親世帯臨時特別給付金を支給して頂きありがとうございました。

この給付金で滞納していた支払いが一部できたという方もいます。しかし、コロナ禍が長引くことで、ひとり親世帯の困窮は、更に深刻な状態になっています。

調査では収入に影響があった世帯が7割を超えています。一日の食事の回数を減らしている世帯は18%にもなっています。

継続した経済支援が必要ですし、12月はどの手当も支給されない月ですので、できれば年内に早急な支給をお願いしたいです。

ただ、前回の追加給付金の申請書には「新型コロナウイルス感染症の影響により、収入が大きく減少しました。」というチェック項目があるため、自分が対象になるのか分かりにくく、申請をためらう方がたいへん多いという状況が見られました。また、元々低い収入で減収はなくても、家計の負担が増えた世帯は対象になりません。

富山県では11月から「ひとり親家庭を応援します!」という事業を展開しています。これは、ひとり親世帯に1万円分のスーパーマーケットの商品券を配布するというものです。この事業の対象は、高校生以下の子どもをもつひとり親世帯で、所得制限はなく、離婚前提に別居している家庭、DVなど暴力から避難している家庭も対象としています。できれば、この事業のように、幅広くご対応いただけるとなおうれしいです。

緊急小口資金についても、『償還免除』という言葉が書かれていますが、「条件があいまいで分かりにくい。返さなければいけないのであれば、とても返していけそうにないから借りられない。でも、お金に困っている」というシングルママが多くいます。これは12月末日までの資金ですが、これも延長を希望します。

大晦日に第2子を出産予定の方がいます。彼女は調停が不調に終わり、これから離婚裁判を行うことになっています。別居中で、児童扶養手当ももらえず前回の臨時特別給付金の対象にはなりませんでした。不安の中で大晦日に出産し、新年を迎える・・・。加えて、富山の冬は寒く、暖房で電気代灯油代が多くかかります。お金がかからないように暖房を我慢してますます体調を崩すことのないよう、日本に生まれてよかったと言えるような心のこもった支援策をお願いいたします。


2.児童扶養手当の窓口の改善を  
  〜しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西(関西)山口絹子

しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西の理事長山口絹子です。本日は児童扶養手当の窓口 ハラスメントについて指摘したいと思います。

児童扶養手当制度は低所得のひとり親に支給される社会保障制度でひとり親にとっての セーフティーネットです。これまで多子への支給額が増額され、隔月支給になったことを歓 迎しています。さらに児童扶養手当の窓口が受給者フレンドリーとなることで、ひとり親家 庭の孤立を防止できると考えます。

ひとり親は年に1回役所の窓口に行き、児童扶養手当継続支給のため書類(現況届)を提 出するのですが、ここで窓口ハラスメントが起こっているのです。

さきほどの「新型コロナウイルスの影響によるシングルマザーの就労・生活調査で「ひと り親にとって児童扶養手当の窓口とは」では「事実婚状態にあるのか」の質問で 口頭ある いは書面チェックで質問されたかに対し 20%を超している。更に「妊娠しているか聞かれ たか」の質問で 1、口頭で質問と、書面チェックで質問の合計は5%~10%となっていま す。特に東京以外の地方自治体にその傾向があります。

そのため、「役所の児童扶養手当の窓口は困ったときは相談できる場所だと思うか」の質 問では、「3.どちらかといえばそう思わない25%」 「4.そう思わない人40%」と3分の2 以上のシングルマザーが相談できないと感じているのです。

また、「役所の児童扶養手当の窓口は嫌な思いをしたり屈辱的な扱いを受けるところだと 思うか」の質問でも「1.そう思う 10%」「2.どちらかといえばそう思う 20%」と3分の1が 窓口は嫌な思いをするところだと感じています。

2018 年大阪府 H 市では現況届で妊娠の有無を確認していました。厚生労働省から「プラ イバシーに配慮して児童扶養手当の事務運営をするように」と事務連絡がだされ、主管課長 会議で改めて注意喚起されているにもかかわらず、昨年、また同様の事態が起こりました。 「妊娠の有無確認」、「妊娠したら役所に届けるようにとの注意書き」、「月2回男性の家 に行ったら事実婚扱い」、「交際相手との食事回数、週何回宿泊するか記入」などです。こ うした対応が残念ながら今年も続いているのです。

このような窓口ハラスメントに対し、受給者からは、「こんな思いをするのは嫌だから受 給をやめた。」という悲痛な声が上がっています。

さきほどの調査で、ひとり親世帯臨時特別給付金の追加給付が申請できなかった理由の自 由記述に「口頭で案内されて相談した際、当てはまるか聞いてくるね!と言われましたが、 忙しくて忘れてしまったのか、現況届の手続きが済んだら、お疲れ様でした、となったので、 それ以上聞けなかった。申請したとして、後からダメとなったら嫌なので申請しなかった」 という声もありました。

窓口対応の改善をしている自治体も増えてきています。シングルマザーが「勇気」を必要 とせず、受給者フレンドリーな窓口をつくるため、受給者の声を反映した児童扶養手当の窓 口対応マニュアル作成を望みます。

最後に、行政改革の流れで現況届は一律郵送で受け付けとして事務方も負担軽減をするよ うお願いします。


3.就労支援施策の拡充を  
 〜しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡(福岡)大戸はるみ

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡は現在、指定管理者として福岡市立ひと り親家庭支援センターの管理・運営に当たっています。

コロナ禍で、4月からの生活相談、就業相談には、解雇された、仕事が減った、就職活動 もままならない。手持ちのお金がわずかだなどの切実な相談が寄せられています。自分が感 染したら、子どもの面倒をみる人がいないので、自主的に休業した人もいます。

認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの調査によると(9 頁)雇用形態が非正規 の労働者に大きな影響が出ています。勤務日数や勤務時間を減らされた人は非正規労働者の 50%に上ります。子どもを抱えて働くシングルマザーは働ける時間が限られており、子育て との両立のため、やむを得ずパート労働者として働き、結果雇用の調整弁となり、不景気に なると真っ先に切られる存在です。

その結果、(10 頁)収入減少となった職種は事務職の 4 割、サービス職の 6 割超、販売、 生産も半数を超え、どの職種にも大きな影響があったことが分かります。

また(13 頁)、(14 頁)のように緊急事態解除後の7月、8月も、休業・待機・出勤制限 で3割~2割近くの人が十分に働けずにいます。休業手当は事業所の規模や雇用形態でまち まちですが、勤務先の今後に不安があり、転職活動を始める人も多くいます。

2020 年度のひとり親の就労支援施策として、求職者支援訓練を充実させることが打ち出 されています。昨年末まではハローワークは受講生が集まらないと言っていました。しかし 緊急事態宣言の解除後は、解雇や離職した人が、押し寄せています。選考で落ちたという話 も聞きます。事務職希望でパソコンコースを希望する人が多いのですが、訓練を修了しても 事務職求人は少なく就職に苦戦する人が少なくありません。

就職活動をしても子どもを抱えた母子家庭は面接以前に不採用になることが多く、緊急事 態宣言の解除後は競争が激しいので格段に増えています。


4.コロナ禍での子どもの教育支援を  
 ~ひとり親パートナーズ (香川)田中佐緒

高等学校等就学支援金制度について、高校授業料が補助されることには子供の学びの機会を増やしていただき感謝しております。国公立学校は年収910万円未満世帯が支援の対象となり、私立高校も年収約590万円未満世帯に拡充され支援の対象の世帯が増えたことは喜ばれている声を聞いております。

しかし、高校生等奨学給付金(教科書代など)については生活保護世帯、年収約270万円未満(住民税所得割非課税)の世帯が対象となっており、児童扶養手当の対象になる方でも給付の対象とならない方がいます。

年収の制限を引き上げていただく、また児童扶養手当の対象になっている方が対象になる改正を望みます。

手続きも毎年7月になっており、高等学校等就学支援金の手続きと同様に4月に手続きできるようになり、支給時期も12月より早く支給されるように変更をお願いしたいです。

大学授業料の無償化と言われる高等教育の修学支援新制度は基本的には住民税非課税世帯が対象であり、年収約270万円までが非課税にあたります。

「年収約300万円未満」の世帯は非課税世帯の3分の2の額、「年収約300万~約380万円未満」は3分の1の額となっています。

私自身は年収が対象より超えており、支援を受けることはできません。大学に進学したいという息子を応援しておりますが、頑張って仕事をし、子供に寂しい思いをさせながら収入があがるといろいろな支援が受けられません。ひとり親の方に関しては年収の制限の基準を引き上げていただきたいと思います。


5.別居中のひとり親家庭への支援を  〜フローレンス 駒崎弘樹



6.養育費の不払い解消と共同親権制度導入はストップを!  
 〜シングルペアレント101(静岡県)田中志保

今年 6 月より「養育費不払い解消に向けた検討会議」が重ねられていることに、私たち当 事者は大変期待を寄せています。別居親の義務である「養育費」と子の権利である「面会交 流」がセットとして解決されないよう、二つをきちんと切り分けていただき、子どもの養育 環境の改善のために、マイナンバーの活用による取り立てや立替払い制度の導入をどうぞよ ろしくお願いします。

一方で、去年から始まった家族法研究会の共同親権導入の是非を議論する研究会について は、展開を注視しています。

先ほど、フローレンスの駒崎さんから報告があったように、離婚を前提に別居を開始し、 数年経っても、離婚ができていない方がたくさんいます。私の主宰する団体にも離婚前の当 事者からの相談が全国からあります。

その中で、A さんというプレ・シングルマザーがいます。

A さんの別居のきっかけは、夫の数々のDVから体調を崩し、お子さんと一緒に実家へ逃 げたことでした。

A さんの夫は日常的に感情の起伏が激しく、何が原因で急に機嫌が悪くなるかわからず、 自分の意見が絶対正しいと主張する人で、感情が高ぶると物を投げたり、「おれが苦労して お前たちを養ってやっているんだから、お前がおれに従うのは当然だ」といったような発言 を繰り返していました。A さんの夫は一方的にコミュニケーションをシャットアウトし、 A さんが関係を修復しようと話しかけても聞き入れず、A さんは日頃から夫に恐怖を感じてい ました。

A さんの夫のDVは妊娠中からひどくなり、生活費も毎月 2 万円しかくれなかったため、 A さんは結婚前からの貯金を切り崩して生活していました。お子さんが生後3ヶ月の時、急 に夫の機嫌が悪くなり、夜中に「お前ら出ていけ」と無理やり玄関先に追いやられて、親子 で家を閉め出されたことがありました。その時は裸足で、お金も携帯ももっておらず、なん とかお願いをして家に入れてもらいました。

その後、生後5ヶ月になったお子さんが深夜に 40 度を越える熱を出し、A さんが救急相 談窓口に電話したところ、「熱が高いので救急病院に連れて行った方が良い」と言われ、子どもを病院に連れていこうとしたところ、「絶対にダメ。こんな夜中に連れていく方がおか しい。お前は母親失格」と行かせてもらえませんでした。翌日、病院に連れて行ったところ、 インフルエンザであったことがわかり、高熱でひきつけをおこしていたら取り返しがつかな い状況になっていたかもしれないとゾッとしたそうです。

また、A さんだけが家から締め出されることもあり、 夫への恐怖から、A さんは心身とも に追い詰められ、子を連れて実家へ戻りました。それ以来、別居を続け、離婚や面会交流な どを調停で行い、丸5年が経ちましたがまだ離婚の合意には至っていません。

A さんの夫は、ご自身の主張をメディアを通してアピールされていますが、A さんとの事 実認識について非常に大きな齟齬があり、A さんからすると夫は事実を伝えていません。

記事では、A さんは夫に黙って出て行ったとしていますが、A さんは実家に戻ることは夫 に伝えており「急に実家に帰るなんて勝手」と夫に言われています。また A さんの夫は子ど もに会わせてもらえなかったといっていますが、A さんが夫のもとから実家に戻って10日 後、A さんの夫はお子さんに会いにきています。一方的なメディア報道は、事実を歪め、A さんの夫を子どもに会えないかわいそうな父親にし、A さんを夫に子どもを会わせないひど い母親という構図を作り出しています。

A さんは、共同親権になってしまったら、離婚の意味が全くなくなり、自分は一生夫の奴 隷になると言っています。

離婚後の共同親権を導入すべき根拠が見当たりません。選択制にするという案も、DV回 避の「恐怖」から被害者が加害者に同意してしまう可能性があるため、危険であると言わざ るを得ません。離婚後の共同親権は危険です。

離婚後に、元配偶者との変わらぬ力関係に悩みながら子どもの面会交流の調整をしている 人は少なくありません。面会交流の調整ですら、困難を抱えている人がたくさんいます。子 どもの進学先選びや医療に関することなど、重要な決定を両親の合意でしなければならない 共同親権の導入をすると、発言力の強い一方の意見だけが優先されます。これは間にいる子 どもも不幸にしてしまいます。法改正の必要はないと考えます。

現在の単独親権制度下でも、問題なく子どもとの交流を頻繁に行えている元夫婦もいます。 共同親権制度導入の法的な根拠はなく、かつ、導入することで、危険だけが増すと考えます。

欧米では離婚後も同等の権利を持たせる共同親権制度により殺人事件などが増えた結果、 現在行き過ぎを反省していると聞きます。日本がそれに追従する必要はありません。


7. 安心安全な面会交流を  
 〜こどもステーション(広島県)奥野しのぶ

わたしは、子育て支援の一環として面会交流支援を行っている立場から、DVがあった場 合の面会交流とその安全確保の必要性についてお話したいと思います。

両親の間で大きな葛藤があるとき、それは子どもにとって苦痛を強いられる体験であり、子どもの心身の健康に長期に渡って影響を与えかねません。

子どもが晒されていた暴力の影響の回復には、何よりもまず、安全な環境を整え、安心感 を得られるようにすること、そして、世話をする親との愛着形成が重要です。また、愛着形成のためには養育親自身の安心感と回復が最も重要となっています。 しかしながら、DVがあっても、別居後、子どもは父親に愛情を示し、愛情を求めようと することが少なくありません。

ですから、「父親に会いたい・会いたくない」という子どもの自由な意思が尊重され、安 全を保障できる「面会交流支援環境」が必要です。

司法での決定の際には、DVについて十分学んだ調査官や児童精神科医を司法に配置して 子どもの意思を聴き取る必要がありますが、現状はそうなっていません。

今、日本では、DV加害者への罰則がないため、面前DVや子どもへの虐待があった別居 親であっても面会交流を求める権利があります。

別居後も続く恐怖や養育費の交渉で対等な立場になれないことから、面会交流の取り決め を避けるために、養育費の取り決めを避けている同居親も少なくないのですが、あたかも、 養育費支払いは、面会交流の代償であるかのように、DV加害者の思惑通りに取り決めが進 む傾向にあります。

養育費支払いは面会交流の交換条件ではありません。
DV離婚の場合、父親に居所を知られたくないなどの理由で、面会交流は、迎えに来てもらうのではなく、どこか指定の場所に子どもを連れて行って引き渡すことが多いのです。

面会交流のために、仕事を休んだり、たまの休みを子どもと一緒に過ごしたいと思っても、 その時間を失ったり、ということ自体が、母親の回復や子どもとの愛着形成を阻害する要因 にもなります。

面会交流支援機関を利用すれば、母子の安全が保障できるとも限りません。

DVの力学に通じた専門家が絶えず目を光らせて監督に当たり、監視付きで、安全な場所 で面会交流を行うなどの方法をとらなければ、母子の安心は保障されません。

また、子どものトラウマとグリーフケアの視点で寄り添う支援員も必要です。 DV被害者である母親が安心して託せる「面会交流支援環境」を社会が作っていく必要があります。実現を望みます。


8.生活保護制度の要件緩和を  
 ~ドットスタイル(山口県) 小西凡子

私は、生活保護制度の自動車保有を認めるよう、要件緩和を求めたいと思います。

私は山口県山口市内で活動する、シングルマザーと子どもたちを応援する団体、ドットス タイルの代表、小西凡子です。

コロナ禍で私たちのところには切実な相談が寄せられます。

「子どもに食べさせる為に自分は1日1食にしている」「ライフラインが止まった」など、 心身ともに命の危機さえ感じられるほどの、ひっ迫した困窮を訴えるものもあります。

その中で生活保護の受給を勧めることもありますが、多くの困窮したシングルマザーは「車を手放すくらいなら生活保護は受けない」と言い切ります。

地方において、車は生活に欠かせないからです。

ですから、生活保護を受けても自動車保有が認められるように指導を徹底していただきたいと思います。

第一に、日本では半数の母子が困窮しているのに、生活保護受給者は10%程度。多くが生活保護を受給できていません。その理由の一つが自動車保有です。

日本の母子世帯数は推計によると約123万2000世帯ですが、平成28年度に生活保護を受 給した母子世帯は約9万9000世帯です。

日本のひとり親世帯の相対的貧困率は48.2%です。
半数もの母子世帯が貧困にさらされていながら、公助である生活保護に繋がった母子世帯 は1割にも満たないのです。

支援は受けたいが生活保護を自動車保有が認められないために諦めている母子世帯が非常に多いと推測されます。

第二に、自動車は子育てをひとりで担う母子世帯にとっては必要不可欠で、車を手放すことは、困窮する母子をさらに追い詰めています。

1時間に1本あるかないかのバスなど公共交通機関を使って子どもの送迎をしたり、買い物 や求職活動のためハローワークに行くことは不可能です。

また、困窮のあまり心身ともに体調を崩されているシングルマザーも少なくなく、公共交 通機関が調整できず、悩んだ末にさらに体調を崩す方や、通院をあきらめる方もいらっしゃいます。

第三に、自動車保有を禁止することは生活保護受給の地域格差を広げます。

自動車保有率の高い富山県の母子世帯の生活保護受給率は0.6%、しかし、公共交通機関の 発達している東京での生活保護受給率は18%、同じ制度の利用率にこれほど差があっていいのでしょうか。

厚生労働省社会援護局保護課は、4月7日にコロナ禍で自動車保有を一時的に認める事務 連絡を出しました。しかし、地方の福祉事務所では、生活保護の申請時に自動車を手放す指 導がまだされています。

自動車保有を認めるよう、指導を徹底してください。

生活保護制度とは、健康で文化的な最低限度の生活を保障するだけでなく、自立を助長す るありがたい制度だと考えています。

ひとり親が 1 日も早く生活を立て直し、自立するためにも、適切な生活保護の受給と、必 要に応じた自家用車の保有許可を求めます。