2026年ひとり親家庭生活調査 報告
ひとり親家庭の生活の厳しさはより深刻に
~経済面・心理面での負担が増大
2026年ひとり親家庭生活調査 報告
物価高騰や近年の深刻な猛暑や自然災害といった厳しい生活環境で迎える夏休み。ひとり親とその子どもたちはどのような経済的・精神的な影響の中で過ごしているのでしょうか?しんぐるまざあず・ふぉーらむでは、2023年から毎年、夏休み中のひとり親家庭の生活調査を行っています。今年は2,242世帯から回答を得ました。今回の調査では、「食費節約(1日2食以下)」や猛暑の中での「エアコン控え」、「相談相手の不在(孤立)」などの厳しい状況が浮き彫りになりました。
【調査の概要】
| 調査目的 | 物価高騰や気候変動等の影響を受けるひとり親家庭の生活状況を調査し、必要な公的・民間支援について明らかにする |
|---|---|
| 調査時期 | 2026年7月20日 〜 7月26日 |
| 調査対象 | NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむのメルマガ会員(約12,000人)および、NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会の加盟団体会員 |
| 調査方法 | フォームブリッジを使用したインターネットによるWEBアンケート調査 |
| 有効回答数 | 2,242人(全都道府県から回答を回収) |
回答者のプロフィール

- 回答者の年齢: 20代(1.8%)、30代(24.0%)、40代(54.7%)、50代(18.9%)
- 同居する子どもの数: 子ども1人(46.6%)、2人(35.4%)、3人(12.7%)、4人(4.0%)
- 世帯主の属性: シングルマザー(99.1%)、シングルファーザー(0.9%) ※いずれも別居中を含む
- 居住地域: 最も多かったのは東京都で全体の17.3%(387人)。特定の地域に偏らず、全都道府県から回答がありました
- 小中学生の有無: 小学生・中学生の子どもがいると回答した人は69.4%
01.ひとり親家庭の暮らし
1.就労収入

就労収入は、月収20万円未満の世帯が、月収ゼロを含む場合、全体の76.5%にのぼります。就労収入ゼロの世帯は12.8%です。
収入ゼロを除いた世帯では、5万円未満が3.2%、5万円以上10万円未満が12.9%で、10万円未満の世帯が合わせて2割弱存在します。また、月収ゼロを除いた世帯(1,877人)の場合の平均値は16万円となっています。
2.1か月の食費

物価高騰が続く中、月の食費3万円以下で暮らしている世帯が約4割にのぼります。また、2万円未満という世帯も約13%存在し、極限まで出費を抑えて生活している実態が明らかになりました。
3.1日の子どもの食事回数

3食以上取れている子どもは6割以上ですが、1食のみが2.5%、2食が34.4%となっており、1日2食以下の子どもが約3分の1(36.9%)存在するという極めて心配な状況が続いています。
4.1日2食以下になっている理由

2食以下になっている理由のトップは「食費を節約するため」で46.0%、約半数を占めます。その他に「生活時間が乱れて3食食べられない」「子どもの食が細い」「ダイエット」などもありますが、経済的理由で食事を減らしている実態は極めて懸念すべき点です。
5.電気代を節約するためにエアコンの使用を控えようと思いますか?

「とても思う」と「思う」を合わせて69.3%(約7割)の家庭がエアコンの使用を控えたいと回答しており、酷暑の中でも命に関わる電気代の節約を強いられている状況がよくわかります。
6.お風呂やシャワーの回数は?

毎日使っている家庭は約7割ですが、約3割の家庭が回数を控えて、水・光熱費を節約しようしています。自由記述では「夏場のシャワーはお湯ではなく水で済ます」などの極端な節約方法もあげられていました。
02.小中学生の暮らし(夏休みの過ごし方)
次に、小学生、中学生の子どもがいる方(全回答者の69.4%・1,556人)に、暮らしについて尋ねました。
7.今年の夏休み、子どもを遊びに連れて行く予定は?

日帰りや1泊以上の旅行・お出かけを予定する家庭がある一方で、「遊びに行く予定はない・行けない」と答えた割合が約4割に達しています。
8.夏休み、子どもについて気がかりなことは?

最も多かったのは「子どもの弁当や昼食の準備が大変なこと」。次いで「生活時間の乱れ」「ゲームばかりしていること」「日中子どもだけで家にいること」などが続きます。
特に「日中子どもだけで家にいること」を気がかりに挙げた人は657人にのぼり、仕事をしなければ生きていけないものの、子どもを1人でお留守番させることに強い不安を感じている親が多いことがうかがえます。また、学校給食が食べられない夏休み期間で、「子どもの体重減少が心配」と書いている方が9.7%いました。
03.親の体調
今回の調査では、ひとり親の体調についても伺いました。
9.現在の健康状態

「良くない」「あまり良くない」と答えた親が合計で約半数近くに上っており、ひとり親自身の深刻な体調不良が目立つ結果となっています。
10.日常生活での悩みやストレスの有無

92.2%(9割以上)が「悩みやストレスがある」と回答しており、ほぼすべての親が何らかの精神的負担を抱えています。
11.悩みやストレスの原因

悩みやストレスの原因として、最も多かったのが「収入・家計・借金等」で1,678人にのぼり、続いて「自分の仕事」(1,156人)、「子どもの教育」(1,137人)となっています。共通してお金にまつわる不安が頭から離れない親たちの実態がわかります。
12.悩みやストレスを相談する相手

「友人・知人に相談している」が24.0%で最多である一方で、「相談したいが誰にも相談できないでいる」(18.0%)と「どこに相談したらいいかわからない」(9.3%)を合わせた27.3%の人が、実際の相談に繋がっておらず、孤立していることが多くいることがわかります。
13.気になる症状について、治療等はしているか?

病院や診療所に通っている人が多いものの、気になる症状があっても「治療していない」と回答した人が33.6%(763人)いるのは、大変気になります。経済面や時間のなさから医療をがまんしていることが懸念されます。
14.過去1か月のご自身の状況


うつ傾向やストレスを測る国際的指標「K6」に基づいた質問に対して、「いつも」「たいてい」「ときどき」といった深刻な回答を寄せる人が多く、精神的に追い詰められている実態がうかがえます。これらの回答については、さらに個人ごとの分析が必要だと考えています。
04.支援・政策
ひとり親家庭への支援策の利用状況と、政策への要望についても聞きました。
16. 子ども食堂を利用していますか?

「利用したことがない」あるいは「利用したことはあるが今は利用していない」を合わせて約8割にのぼり(利用なし59.5%、今は利用していない20.4%)、支援が届ききっていない現状が示されました。
利用しない理由の背景には時間と立地の課題が見られました。「近くになく行けない」「子どもが不登校で行きたがらない」「子どもだけで通えず、親は仕事で付き添えない」といった理由や、「昼間に開設されている子ども食堂にはなかなか行けない」という方もいます。
17. 実現したらいいと思う支援(社会に期待すること)

最も要望が高かったのは「児童扶養手当の増額」で1,592人、次いで「夏休みの子どもたちの食事の提供」が1,384人に、「児童扶養手当の所得制限ラインの引き上げ」 1,150人の順になりました。
「社会に期待すること」を自由記述で尋ねたところ、まず「失望」や「絶望」を最初に書いていた方が複数いました。「期待するだけ無駄」「相談しても解決しない」「支援を断られて絶望を感じた」など。公共交通の乏しい地域での「生活保護の受給要件にある自動車保有制限」への憤りを書いている方もいました。また、児童扶養手当の現況届を提出するための負担を減らすために、「行政手続きのオンライン化」を求める意見も多数ありました。子どもの不登校に伴うひとり親の困窮を訴える方も多く、金銭的・人的サポートを求める悲痛な声が多く見られました。
2026年夏のひとり親家庭生活調査のまとめ
物価高の影響が長期化する中、ひとり親家庭では食費や光熱費、日用品など日常生活に必要な支出が増加し、生活の厳しさが深刻になっています。今回の調査ではひとり親が抱える課題は経済面だけにとどまらず、就労・子育て・心理的負担、私達子どもたちの孤独や孤立等が複合していることが明らかになりました。
- 月の食費が3万円以下の世帯は約4割、生活困窮により子どもの欠食が続いている
- 1日2食以下で過ごす子どもは37%(2025年冬調査では28%)。半数が「食費を節約するため」と回答
- 約7割がエアコンの使用を控えたい
- 夏休みに遊びに行く予定がない・行けない子どもは約4割。それ以前に、親が仕事で忙しい等の理由で、親子で過ごす時間を確保できない家庭も多い
- 日中、子どもが一人で過ごすことへの懸念(657人が気がかりと回答)
- 子ども食堂を利用していない世帯は約8割で、支援が十分に届いていない現状がある
- 親の約半数が「体調が良くない」と回答
- 「相談できない」「相談先が分からない」が合わせて約4割
- 約7割が児童扶養手当の増額を求めている
提言
今回の調査結果を踏まえて、しんぐるまざあず・ふぉーらむからの提言を3つにまとめました。
- 児童扶養手当の支給金額の引き下げ、所得制限ラインの引き上げ
給付金額は毎年少しずつ増えていますが、物価高には到底追いつかず、所得制限ラインの引き上げは実現に至っていません。 - 子ども食堂に限らず、食品支援や食事支援の拡充
夏休み期間中は特に、すべての子供に安全な居場所と食支援があることが重要だと考えます。 - 仕事と子育ての両立ができる支援施策の拡充
ひとり親が一生懸命働くことで子どもたちが孤独な状況で放置され、「お留守番は仕方ない」と済まされがちです。子どもの心の負担を改めて考える必要があります。仕事をしながらでも、親も子も安心して生活できる子育てや家事などの支援策の拡充が必要です。
低所得のひとり親家庭が直面する主要な課題と提言
報告会では、ひとり親家庭サポート団体全国協議会代表の赤石千衣子さんが、低所得のひとり親家庭が直面する主要な課題と提言を、4つの項目に整理して紹介しました。
1. 夏休み・酷暑期における食と住環境の困窮
【課題】
夏休みや酷暑の時期、低所得のひとり親世帯では食事に困り食事を抜く子どもが存在するほか、猛暑の中でも冷房を使用できない厳しい状況に置かれています。
【対応・提言】
こども食堂などの民間支援にとどまらず、学校や児童館などの公的施設をクーリングシェルターや食事提供の場として活用することが、今年度こども家庭庁から5月に自治体に通知されました。愛知県みよし市は、低所得の子育て世帯にこども緊急応援手当を支給、それとともに児童館で全員にお弁当を提供する仕組みを作り、こども緊急応援手当受給世帯には無償で、それ以外の世帯には1食350円で配布するようにしました。誰が無償なのかは配布している職員もわからないようにして、スティグマ(偏見や羞恥心)を生ませない支援を行いはじめました。
2. 児童扶養手当「現況届」の窓口対応とプライバシーの問題
【課題】
児童扶養手当の現況届を提出する際、自治体窓口に衝立などの配慮がない状況で、交際相手の有無や妊娠しているかどうかについてプライバシーの侵害するような質問をされるケースがあり、当事者が傷つき窓口不信に陥っています。
【改善策】
スマートフォンでの書類アップロードやオンラインフォーム回答などの手続きのデジタル化を推進することで、当事者が仕事を休む負担を減らし、職員の残業時間削減にもつなげるべきだと提言しています。
3. 生活保護申請における「自動車保有規制」と「時間の貧困」
【課題】
地方では公共交通機関が発達していないため、保育園や部活の送迎、買い物や親子の通院・送迎に自動車が不可欠ですが、車の保有を理由に生活保護の申請を断念せざるを得ないことが調査で明らかになりました。
車がないことで移動に長時間を要し、ただでさえ深刻な「時間の貧困」を悪化させ、結果として自立を妨げています。
【提言】
地方の実情を踏まえ、自動車がすべての場合において利用でき、生活保護を利用できるように制度を見直すことが不可欠です。
4. 仕事と育児の両立支援における手続きの壁と認知不足
【課題】
ひとり親の90%が仕事と子育ての両立に手助けがなく困っている一方で、ヘルパー派遣を行う「日常生活支援事業」の認知率は36%、実際の利用率は7%にとどまっています。その主な原因は複雑な申請手続きにあります。
【提言】 制度の申請手続きを簡素化して使いやすくすることや、茨城県の「一人親ワークライフ臨時サポート事業」のように低廉な料金で家事・育児を広域的にサポートする実効性のある仕組みを広げていく必要があります。
Ⓒしんぐるまざあず・ふぉーらむ
