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「ハーグ『子の奪取』条約の批准に慎重な検討を求める市民と法律家の会」声明

声 明

  2011 年5 月17 日
   「ハーグ『子の奪取』条約の批准に慎重な検討を求める市民と法律家の会」

 報道によれば、日本政府はハーグ「子の奪取」条約に加盟する方針を固めたという。しかし、同条約への加盟は、海外で婚姻生活を営む日本人配偶者(とりわけDVの被害者)及び日本人の子に対し、如何なる理由で婚姻関係が破綻しようとも、日本への帰国を許さず、滞在国における過酷な状況を甘受することを強要する結果を招来する高度の危険があり、この危険は国内法の整備によっては、到底、払拭できない。よって、私たち「ハーグ『子の奪取』条約の批准に慎重な検討を求める市民と法律家の会」は、ハーグ条約への加盟に強く反対する。
 ハーグ条約は、配偶者が他方配偶者の同意なく子を連れて母国に戻った場合に、他方配偶者が子の「居所指定権」を有しているときは、配偶者が子を連れ帰った理由、残された配偶者の子の監護者としての適格性の有無、実際に子の世話ができるか等の事情を一切考慮することなく、連れ帰りを一律に「違法」と断じ、子を従前の居住国に返還させることを目的とする条約である。仮に日本がこの条約に加盟すれば、国外に住む日本人配偶者がDVの被害を受けたり、子が他方配偶者から虐待を受けたために、やむを得ず日本人配偶者が子とともに日本に帰国した場合であっても、その連れ帰りは「違法」と断じられ、原則として子の返還を拒むことができない。
条約には返還例外事由が規定されているが、規定自体極めて制限的であるだけでなく、実際の運用ではさらに制限的に解釈され、子の虐待の存在を認めながら「子に対する重大な危険はない」として返還を命じた判決すらある。条約加盟国であるスイスは、この条約の問題点を認識し、子の返還例外事由を広げる提案をしたが、他の加盟国に拒否され、やむなく独自に国内法を作って対処している。しかし、ハーグ条約の構造上、その国内法も返還例外事由を非常に限定した内容とせざるを得ず、DVの被害者であることを返還例外と規定することはできなかった。これらの問題点を踏まえ、NHKのクローズアップ現代でも紹介されたスイス連邦法の専門家であるBucher博士は「日本はハーグ条約に加盟すべきではない」と述べている。
 日本政府は、ハーグ条約が国境を越えた子の移動をめぐる紛争について唯一の解決ルールであるとするが、これは正しくない。日本をはじめ各国は、それぞれの国内法において子の引き渡しや面会交流を求める裁判手続を定めており、それらの手続を適切に用いることで、真に子の福祉に配慮した紛争解決ルールを設定することは可能であり、その一環として必要かつ適切な場合は子の引き渡しを命じることもできる。特に、日本では、家庭裁判所が調査官を活用し、従前ならびに現在の子の監護状況、両親の監護者としての適格性などを調査し、子の福祉を第一に返還の要否を判断するなど、事案に応じた解決を図ってきている。国境を越えた子の移動めぐる紛争は、日本からの子の連れ去り事案も含め、各国の国内法を充実させ、活用することで、子の福祉を第一に考慮する解決を模索するべきであり、ハーグ条約のごとき「まずは返還ありき」という仕組みによることは、子の福祉に反する。よって、ハーグ条約への加盟はすべきでない。


投稿日:2011年6月1日

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